Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Lisez 三国志(五) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 325 249 caractères · 653 écrans
二
「呉侯のご命をうけて、再度、それがしがこれへ参った仔細は、疾くご推察であろうが、もっぱら荊州譲渡の事を議せんためであります。すでに呉家と劉家とは、ご婚姻によって、まったく一和同族の誼みすらある今日、なお久しく借り給うてお還しなきは、世上の聞えにも、将来の御為にも、おもしろからぬことかと存ぜられる。この度はぜひそれがしの顔もたてて、お快くご返却ねがいたいと思います」
魯粛が、厳重な語気を裡につつんで、そう切り出すと、劉玄徳は、彼のことばの半ばから面をおおって、よよと、声を洩らして哭き出した。
魯粛は愕いて、
「……これは?」と、ばかり玄徳の哭く様子を見まもっていた。
二
孔明は、その機に、衝立の後ろから歩いてきて、魯粛へいった。
「粛公。あなたは、皇叔がなんで嘆き悲しむか、仔細をご存じか」
「わかりません」
「蜀の劉璋は、漢朝の骨肉、いわば皇叔とは、血において、兄弟も同じです。もし故なく兵を起して、蜀へ攻め入れば、世人は唾して不徳を罵るであろう。――さりとて、もし荊州を呉侯へ返せば、身を置く国もありますまい」
「わかりました」
魯粛は、座を起って、なお哭き悶えている玄徳の肩へ顔をよせて慰めた。