Classiques japonais avec furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Lisez 平の将門 (たいらのまさかど) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 232 193 caractères · 463 écrans
将門は、芦間の岩に腰を下ろした。さすがに、豊田の館から、馳せ通し、また、歩きとおしたので、少し疲れたものとみえる。渺茫たる大江の水を前に、しばし、行々子の啼く音につつまれていた。
その行々子の声に、彼は、自分がまだ、幼い頃、両親に伴われ、侍女や郎党に傅かれ、常陸の方から、この大河を舟で渡って帰った日のことが思い出された。記憶にある程だから、自分の三ツの祝いではなく、七歳の祝いであったろう。何しろ、行った先でも、舟の中でも、晴れ着を装われた御子様の自分が祝福される中心であった。
招かれた先の、常陸石田の大叔父も、羽鳥や水守の両叔父も、みな家人家族をつれて、わざわざこの川岸まで、見送りに来たものだった。――その頃の、自分の父良持の威勢と徳望は、大したものだったにちがいない。彼らは、父の兄弟だが、父の前では、たれ一人、頭のあがる者はなかった。一族の長上とあがめて、犬馬の労もいとわなかった。
その日、この大河を渡って帰るためにも、叔父共は、殊更、新しい船を用意し、若い女達に、大きな絵日傘を翳させて、酒肴まで、備えてあった。七歳の祝い着に飾られた自分は、その真ん中に、太子様のように、行儀よく、坐らせられていた。