Classiques japonais avec furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Lisez 平の将門 (たいらのまさかど) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 232 193 caractères · 463 écrans
そろそろ、酒戦場風景である。――この頃になって、将門も、ようやく、眸の中に、虹をあらわし、
「たれか舞え、舞わぬか、陽気に」
と、わめき出した。
こんなに大陽気なのに、将門はなお、陽気に陽気にと、不足らしくいっていた。肌の悪気が、強欲に布を纒いたがるように、寂しさを打ち消すものが欲しかった。
忘れかねる桔梗の面影やら、死んだ愛児のことばかりでなく、もうひとつ、彼の心には、孤独な怯えが潜んでいた。
それは、およそ彼の表面の言行とは、正反対な、小心さで、人知れず、くよくよしているものだった。――後悔、反省、中央への憂い、弟共への未来の心配など、すべて、愚痴といってよい種類の凡情と、愚直ともいえるほどな、持ちまえの正直さから来るものだった。――それをかりに彼の良心とよぶならば、彼の良心は、こんな時、酒漬けにされる蝮のようにもがいて、日頃よりも意地悪く、彼の胸に噛みついているのであった。
それゆえに彼は、十一月の末以来、常陸へ攻め入り、官衙穀倉を焼き払い、貞盛、為憲を追い、転じて、破竹の勢いで、上野、下野、相模、武蔵、伊豆、上総と、いたる所の国庁を占領し、降人を容れ、軍の威容を、数十倍にもして、ここに凱旋しながらも――またこの大祝典を挙行しながらも――それを悔いる気もちのほうがしきりであった。