Classiques japonais avec furigana
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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Lisez 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 166 525 caractères · 334 écrans
その九十
その九十
抽斎歿後の第十三年は明治四年である。成善は母を弘前に遺して、単身東京に往くことに決心した。その東京に往こうとするのは、一には降等に遭って不平に堪えなかったからである。二には減禄の後は旧に依って生計を立てて行くことが出来ぬからである。その母を弘前に遺すのは、脱藩の疑を避けんがためである。
弘前藩は必ずしも官費を以て少壮者を東京に遣ることを嫌わなかった。これに反して私費を以て東京に往こうとするものがあると、藩は已にその人の脱藩を疑った。いわんや家族をさえ伴おうとすると、この疑は益深くなるのであった。
成善が東京に往こうと思っているのは久しい事で、しばしばこれを師兼松石居に謀った。石居は機を見て成善を官費生たらしめようと誓った。しかし成善は今は徐にこれを待つことが出来なくなったのである。
さて成善は私費を以て往くことを敢てするのであるが、なお母だけは遺して置くことにした。これはやむことをえぬからである。何故というに、もし成善が母と倶に往こうといったなら、藩は放ち遣ることを聴さなかったであろう。
成善は母に約するに、他日東京に迎え取るべきことを以てした。