Classiques japonais avec furigana
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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Lisez 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 166 525 caractères · 334 écrans
その百十七
当時勝三郎は東京座頭取であったので、高足弟子たる浅草森田町の勝四郎をして主としてその事に当らしめた。勝四郎は即ち今の勝五郎である。然るに勝三郎は東京座における勝四郎の勤ぶりに慊なかった。そして病のために気短になっている勝三郎と勝四郎との間に、次第に繕いがたい釁隙を生じた。
五月に至って勝三郎は房州へ転地することを思い立ったが、出発に臨んで自分の去った後における杵勝分派の前途を気遣った。そして分派の永続を保証すべき男女名取の盟約書を作らせようとした。勝久の世話をしている女名取の間には、これを作るに何の故障もなかった。しかし勝四郎を領袖としている男名取らは、先ず師匠の怒が解けて、師匠と勝四郎との交が昔の如き和熟を見るに至るまでは、盟約書に調印することは出来ぬといった。この時勝久は病める師匠の心を安んずるには、男女名取総員の盟約を完成するに若くはないと思って、師家と男名取らとの間に往来して調停に努力した。
しかし勝三郎は遂に釈然たるに至らなかった。六月十六日に勝久が馬喰町の家元を訪うて、重ねて勝四郎のために請う所があったとき、勝三郎は涙を流して怒り、「小母さんはどこまでこの病人に忤う気ですか」