Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
それは神奈川宿の海だった。
「おう、夜が明けた」
彼は、花世が逃げてほっとした心と、その心を非とする慚愧とに責められながら、街道の松の根に腰を下ろした。
もう、ぼつぼつ旅人が通る。
どうせの事に、軍鶏籠がここまで来るのを待ち合せていようと、そのまま、明け放れてゆく海面を眺めていると、彼方の並木から、朝の春風爽やかに、馬の鈴が鳴って来る。
煙草の火――耀蔵はさっきから、火のない煙管を持っていた。それが、近づいて来るのを待ちかまえて、
「馬子」
と、呼びとめた。
馬の背には、早立ちの女客が乗っていた。
「――火を貸してくれぬか」
「おやすいことで」
だが耀蔵の眼は、その途端に、あらぬ方へ奪られていた。馬の背にある旅の女が、ちらと、冠り手拭の下から涼しい眼で彼を見下ろしたせつなに、
「あっ」
と、煙管を足もとへ落した。
「おのれ! 花世ッ」
女も、はッと何かに搏たれたように、
「何をするのさ」
掴みかかった耀蔵の手を、菅笠で振り払って、ぱっと、馬を躍らした。
不意を食らって、手綱を離した馬子を尻目にかけながら、女は、元の東海道の方へ、まっしぐらに引っ返して行く。
「花世! 花世! たしかにゆうべの花世に違いない。