Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 139 230 caractères · 280 écrans
三
「無駄を言うな、とにかく行ってみようか、少し遠いが」
「有難え、そう来なくちゃ――」
ガラッ八の八五郎は、額を叩いて先に立ちました。神田から尾久まで二里に余る道ですが、こう調子づくと、八五郎は調法なことにほとんど疲れを知らぬ人間です。
三
尾久の土手へ行ってみて、さすがに平次も驚きました。田舎のことで、検屍の手が廻らないのか、二人の死骸は筵を掛けたまま、土地の御用聞の喜八が頑張って、一生懸命野次馬を追っ払っておりますが、まだ八州の役人も顔を見せず、江戸の御用聞の平次が来ても、遠慮しなければならぬほどの人間は一人もおりません。
「お、銭形の」
喜八の顔には、救われた者の喜びが漲りました。
「尾久の兄哥、久し振りだったな。相変らず達者で良いね」
「達者なのは口と酒ばかりだ。見てくれ、この通り血の海だが、俺じゃ手の付けようはねエ。八州の役人が来ないうちに目鼻を付けなきゃ、またうんと小言を言われるだろう。それに他の御用聞に嗅ぎ出されて、馬鹿にされるのも業腹だ。銭形の兄哥なら――」
喜八がそう言うのも無理はありません。千住の先は江戸の町奉行の管轄でなく、いわば平次は縄張違いですが、この老御用聞を救ってくれるのは、功名に恬淡な平次の外にはありそうもなかったのです。