Classici giapponesi con furigana
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めいあん
明暗
Leggi 明暗 (めいあん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 322.590 caratteri · 645 schermate
彼女は黒い眉を動かした。無言のまま帯の間へ手を入れて、そこから先刻の書翰を取り出した。
「これをもう一遍見てちょうだい」
津田は黙ってそれを受け取った。
「別段何にも書いちゃないじゃないか」と云った時、彼の腹はようやく彼の口を否定した。手紙は簡単であった。けれどもお延の疑いを惹くには充分であった。すでに疑われるだけの弱味をもっている彼は、やり損なったと思った。
「何にも書いてないから、その理由を伺うんです」とお延は云った。
「話して下すってもいいじゃありませんか。せっかく来たんだから」
「お前はそれを聴きに来たのかい」
「ええ」
「わざわざ?」
「ええ」
お延はどこまで行っても動かなかった。相手の手剛さを悟った時、津田は偶然好い嘘を思いついた。
「実は小林が来たんだ」
小林の二字はたしかにお延の胸に反響した。しかしそれだけではすまなかった。彼はお延を満足させるために、かえってそこを説明してやらなければならなくなった。
百四十六
「小林なんかに逢うのはお前も厭だろうと思ってね。それで気がついたからわざわざ知らしてやったんだよ」
こう云ってもお延はまだ得心した様子を見せなかったので、津田はやむをえず慰藉の言葉を延ばさなければならなかった。