Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

Leggi 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 213.575 caratteri · 424 schermate

Aozora Bunko

清盛を父とし、後白河法皇をお舅にもち、高倉天皇との間に生した幼帝安徳天皇を抱いて、争乱の世を、壇ノ浦まで追われたという女の生涯を、蒼古としてなお仄白い顔容の上に想いえがいていると、蝋涙の音も、ふと、その人のものかと怪しまれてくる。――いつの時代でも、戦乱には、いちばんむごい目に遭って、世の風浪のかぎり漂い果てる女――きのうの女、これからの女性はなどと、想いはつきない。

東大寺へ行った日は、しとどな、雨の日だった。

けれど、その日はちょうど、四月八日の灌仏会であったし、桜も夜来の雨で、一ぺんに開き、奈良も人出がなくて、あちこち、静かに見られたのは倖せだった。

なんといっても、治承四年に、平氏と南都の興福寺とが、ここで戦ったのは、双方共に、いい歴史をのこしたものとはいえない。

大仏殿は、聖武の世から、二度焼けている。治承四年の兵火と、松永久秀の戦国初期の兵火と、じつに、どっちも、人間の狂気時代に、焼けている。

あの天平盛期の平和を思いながら、大仏殿に佇んで、大仏の偉大な美と荘厳に打たれていると、時には、これへ火を放ける心理にもなった人間の前科に、人間の凶暴性や愚に、ふと、慄然たるものを覚えずにはいられない。