Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Leggi 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 213.575 caratteri · 424 schermate
思わぬ世間の恩というべきである。
矢ノ川越えは、紀勢岬の景勝といえよう。日本画的風景ではない、どうしても南欧のコバルトを要する。などと三十五度角度に這い登ってゆく自動車の中でいい気になっていたが、運転手氏にいわせると、海抜八百メートル、大念仏だの小念仏などといって、バスも恐れる難所があるとのこと。思わず道をのぞくと、岩磐に、剣のような氷柱が下がっていた。
峠の上で、降りて一休みする。岩蔭に、杉皮と戸板で囲んだホッ建て小屋がある。みかん、キャラメルなど、少しならべて、赤子を負った三十歳がらみの痩せた女性が、土間の焚火のトロトロ火へ、薬鑵をかけて、湯をわかしている。
ぼくらの姿を見、茶をついでくれる。その手の痩せていること、この山中の冬木の肌にもない。お負いばんてんの背をのぞくと、女の子らしい、何も知らずに眠っている。「こんな山の中で、商売になりますか」と嘉治さんが訊く「ええ、一日六回ほど、バスが通るものですから」「ほかに人は通らないでしょ」「めったに」「危険じゃありませんかね、お若いのに」と、嘉治さんはほんとに心配顔をする。なお訊くと、戦時中、横浜で戦災にあい、良人に死なれ、子をだいて、郷里の尾鷲へ帰家したものの、そこにも、祖母とカリエスにかかっている妹があって、どうしても、自分が働かなければならないし、