Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

Leggi 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 213.575 caratteri · 424 schermate

Aozora Bunko

自動車、これからは降り一方になる。会津境へ入ったわけ。窓外は凡景となり、つい、うとうとしている間に、南会津の村々は過ぎてゆく。

わびたる田舎町、荒海の路傍で、車をとめる。庄屋造りの旧家を横手に見、ふと、物好きを起こして、素朴な人々を驚かせ、あちこち、屋造りの様式を見学させてもらったのである。当主は、星勘治さん、親切に、案内してくださる。

たれより執心なのは、杉本画伯で、数枚のスケッチをとりながら、なお名ごり惜しげにいちばんあとから車へ帰ってくる。車が出てからその健さんが声をひそめ、「いや、あの屋造りも、いいですがね、暗い中二階に、美人がいましたよ、悪いから、上へはあがらずに、のぞいただけですがね。もしかしたら、病人かも知れない。けれど、たいした美人でしたな、じつに印象的な」としきりに、二百年の旧家の湿度や空気と、そこの屋根裏二階にひとりいたという目撃の美人像とを、ことばで描いてみせる。

「じゃあまるで、鏡花の小説みたいじゃないですか」と、春海さん大いに笑う。しかし健さんは、生まじめである。「そうなんです、鏡花ですよ、まったく、その鏡花なんで」と、ひとりなにやら惜嘆してやまない。