Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Leggi 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 213.575 caratteri · 424 schermate
けれど、馬の通れぬような嶮峻ではない。
附近の峰や谷崖を見ても、植物はすべてといっていいほど灌木帯の密生である。騎馬の行進を阻めるような大樹林はこの通路には昔からなかったのだろう。もし原生林のような地帯があったら、義経のあの行動は、しょせん、不可能だといいきれる。
義経は用意周到な人だったという。おそらく行動に出る以前に、あらゆる点にわたって、物見も放ち、踏査もさしておいたにちがいない。また、何よりは、この辺の土質は、小石もない山砂で、岩磐の尖りや石ころもなく、騎馬の場合、馬のひづめを傷める惧れがないということも考え合わせられる。
昔の戦記物を読むと、馬は不死身のようである。現代のジープかなんぞのように、自由自在に駆けさせている。しかし、じっさいには、馬の脛ほど傷みやすいものはない。ひづめは殊に岩石に脆く、また山坂の降りは馬のニガ手である。この程度の山坂を駆けくだすだけでも、よほどな難行軍であったかと思われる。なぜならば、そう更え馬は曳いて行かれないし、行き着くだけが目的でなく、敵に会してからの騎馬戦が決勝なのだ。ヘトヘトになった馬では、勝目はない。