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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

二

『まあ、余り角目立たんがよいが』

『いや、持参して、望む者もございますから』

『望まれれば、試合を挑まれたも同じこと。嫌ともいわれまい。――何事も、お世話人と、弟子共に、おまかせいたすで』

『然らば』

と、立会い人が、席へ退がると、斬り人は又、名を呼ばれて立った。

二

『山浦真雄の作!』

一刀を払って、斬り人が、こう刀を衆に示して、据物に向うと、観衆も斬り人の呼息と一つになって、しいっとなった。

『…………』

わけても、環は総身を固くして、斬り人の手元を睨んでいた。

呼吸もせずに。――手にも、われとなく、汗をにぎって、

――ええいッ!

と云う声を、耳というよりは、彼は、心臓を突き貫かれたように聞いた。

据物の鹿角から――どすっ――と鈍い音が刎ね返った。斬り人は、二太刀目を下ろした。そして三太刀目。

『曲がったッ』

と、さけんで、身を退いた。

環の側にいた柘植嘉兵衛は、ぐらぐらとしたように、前へ出て行った。

『あ。暫く』

『なんじゃ』

『失礼ながら、今の試しは、斬り人の手元に、少し御無理があったように見受けられた。――この一刀で、もう一応、お試しがありたい』

『心得た』