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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

木の葉雨

一

又、彼の刀の切銘は、従来、「信濃国正行」とか「山浦内蔵助」とか又ただ「環」とか、その時々で切っていたが、やがて四谷に住んでから、

源清麿

と、作品に切るようになった。

清の名乗は、勿論、恩師窪田清音の一字。一刀一刀鍛つごとに、鉄へ切り込む鑿のごとく、その人を忘れまいとする彼の気持から選んだ名であることはいう迄もない。

そして、近頃、取った一弟子にも、清人という名をつけてやった。

木の葉雨

一

弟子は、他にも二、三名は取ったが、師匠清麿の烈しい精進に寄りつけないで、よく出たり這入ったりしていたが、清人だけは離れなかった。

清人は仙台生れで、出羽某とかいう田舎鍛冶に就て、修業の下地はあったし、鈍な代りに、正直で朴訥だった。清麿も、仕事ではよく怒りもするが、特別、可愛がっていた。

『師匠』

と、その清人が、或る日云う。

『なんだ、いやに改まって』

『お願いがあるんです』

『おれに?』

『へい。……他じゃありませんが』

『何をもじもじして居るのだ。どうも汝は煮え切らねえ男だ。刀鍛冶が、そんな鈍じゃあ駄目だ。もっと、すっぱりと、歯切れをよくしろよ、歯切れを』

『じゃあ云います。