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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

四

彼は、その音響に、気をとられながら、仄暗い山門の下を潜った。そして石段を降りて、十歩も歩み出したかと思うと、

びゅるっ――

どこかで、烈しい弓鳴のするように、空気が鳴って、轟然と、十間ほど先の大地に、大砲の弾が炸裂した。

地を揺り上げられた心地で、はッと恟んだ途端に、小石交じりの土が、焔硝のけむりと一緒に、びしゃッと、飛んで来た。

『――あっ』

と、内蔵吉は、両手で、眼を蔽った儘、大地へ俯っ伏した。

四

――暫くは、耳も気も、遠くなっていた。

と、程なく。

野駈け支度の藩士たちである。ひどく狼狽した態で六、七名ほど、ばらばらとここへ駈けて来るなり、内蔵吉の姿を認めて、

『やっ、怪我人が』

『深傷か』

走り寄って、彼の体を抱き起した。

石交じりの土砂に飛ばされたのである。腫れ上った顔を抑えながら、

『何、大した事じゃございません』

内蔵吉は、やっと、気がついて首を振った。

『お離しください……大丈夫ですから』

『待て、手当をして遣わす』

『それには及びません』

『駄目だ、顔から、血しおが流れておる、脚も、何うか致さんか』

『ようござんす、離しておくんなさい』

『待てというに』