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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
二
貧乏は、彼を追いつめてくる。
お次は、何という宿縁か、妻ともなく、その貧苦と闘って、
(大馬鹿者)
と叔父から云われ、勘当の身となってしまった。
彼女は、それを、むしろ幸として、
『一生涯でも、清麿さんの仕事場へ、研水を汲んであげれば、わたしはそれで本望です』
と、清人に洩らした。
清人は、嘆息をもらして、
『もう、お故郷の方に、義理立てもないのだろうが、師匠は、若いお次さんに、胸の病をうつしたくないからだぜ。女房にしないからといって、それを恨んじゃ違うぜ』
『知らない』
部屋へ走りこんで、彼女はひとりで泣いているらしかった。
『きょうは、お次さんの泣く番か』
清人が、そんな冗談を云っていると、窪田清音の仲間が使に来た。――お次は又、はっと、顔色をかえた。
(もしや何か? 自分の事で)
と、恟々していたが、そうではなかった。何か用事があるから、清麿が帰って来たら、すぐ屋敷へ来るようにという口上なのであった。
二
ずっと、不沙汰なのである。江戸へ来てからの恩を、忘れ果てたわけではない。
武器講百刀会の刀はまだ四半分も鍛ち上げていない。どう自身でも心を責めても出来ないのである。