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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
五
は生れた。彼は、その時から、優れたる剣工として、社会へ送り出された。
発起人には、窪田清音や知名の旗本や、酒井家の藩臣たちだの、巣立ちの一剣工にはむしろ過ぎた位な人々の名が連ねられた。
五
百口の申込みは、瞬くまに、加入者で満たされてしまった。――同時に、物置小屋の鍛刀所では、何かにつけて不便なので、清音の屋敷から遠くない、四谷北伊賀町に一軒借りうけ、そこで、彼が江戸に於ける第一声の鎚音を、初めて、揚げることとなった。
一刀、一刀、又一刀――と、彼の作品は、そこから生れて、百刀会の加入者たちに、籖引の順で渡されて行った。
その裏には、彼の凄まじい精進が、赫々と溶鉄の炉に燃え、骨を削り血を吐くような苦心と研究が潜んでいた。
仕事場に立って、鎚を把ればさながら鬼、深夜、土や焼刃の思念に痩せ苦しむ影はまるで現な幽人であった。そして、朝に、自己の会心の作を研ぎあげて、
しめた!
と、彼自身がさけぶ折などは、まったく神か、嬉々たる児童のような、歓びの姿だった。
――人は、そこまでの彼は見ない。
彼の作刀を見た者は、唯云った。
『これはすばらしい。国広、康継、虎徹、水心子、それから近頃の直胤――なんどにも劣らぬ作だ』