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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

二

象山が何者だと思うのである。こんな扇子をもらって、有難がっているような事で、何うして、大志を抱いて成すことが出来よう。

彼は、扇子を、谷へ投げた。

白い蝶みたいに、それは千仭の底へ、吸われて行った。

『おれは、おれの道を、歩いてみせる!』

そう思って、高原にかかった。雲は、跛歩をひく足よりも低かった。

芒の果から、濛々と、黄色い砂塵が立って来た。

二

近づくに従って、それは一隊の牛に曳かせてくる鉄車だと分った。およそ二十台もあった。菅笠、陣笠、布笠など、汗にまみれた武士や足軽が叱咤して、牛と人足とを励ましてくるのである。

新発田藩御用

車の一台一台に、木札が打ってある。

今日も、彼は又見た。それは大砲や西洋式の小銃や、火薬箱を積んだ輸送隊である。

上田、松代、松本の諸藩、榊原家の隊伍にも、これで会うのが二度目だった。――彼はその砂埃りを浴びて摺れ違うと、急に心が暗くなって、道にも迷う気がして来た。

『これからの戦争に、鎚の先で打つ刀などが、物の役に立つだろうか?』

そう考えずにいられなかった。

『調練場で撃つのでさえ、あれほど威力のある大砲。――それにひきかえて、鎚の打ち方の、火加減の、湯の秘伝のと、一本の刀にも、血を吐くような苦しみをして、あげくに、折れ易いとか、曲がるとか、死んだ末代の先までも、とやかく云われる