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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

……たいへんです、ちょっと来て』

お次の声がした。

清人は、仕事場から出て行った。

『なんだ、大変て』

『左門町に、固山宗次という、弟子の沢山いる刀鍛冶がいるでしょう』

『箆棒め、弟子が大勢居たって、宗次の刀なんぞ、鈍刀番附の横綱だ』

『そんなことを告げに来たんじゃありません。その宗次の弟子が、何処かで、家のお師匠様に、斬られたことがあるんですってね』

『へエ。……聞かねえが』

『その事だの、遠い前の事だの、種々と、遺恨が積っているから、清麿のやつを斬ってしまわなければならない。今夜は斬り込むのだと、ゴロ浪人まで入れて、刈豆店の居酒屋で飲んで居ますとさ。いつもここへ来る時、買物に寄る、煮豆屋のおかみさんが教えてくれたんです。……清人さん、お師匠様は』

『うたた寝していら』

『まあ……。何うしましょう』

『何うしよう』

と、清人と一緒に顫へ上って、そっと、清麿の寝顔をのぞきに来た。

清麿は、眼をあいていた。そして、清人から聞かないうちに、

『抛っとけ抛っとけ。だが、いくら蚊みたいな奴でも、沢山来ちゃあ、うるさいから、玄関の両側に、薪をうんと積んで、蚊いぶしの代りに焚火をしておけ。