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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

三

――いいか、そして門の戸も、裏の木戸も、残らず開けっ放しにしておくんだ』

『師匠……。お酔いになっているんでしょう』

『ばか。酔っているか居ないか、これを見ろ』

抱いて寝ていた自分の一刀を、寝たまま抜いて、ぱッと夕闇を横に薙いだ。

『――あッ、あぶないっ』

清人は、台所へ飛んで来た。

お次は、御家人の娘だけに、そう聞くと、

『仰っしゃるように、して置きましょう』

と、家の中も、表も裏も、皆開け放して、二、三ヵ所に、大袈裟な焚火をしておいた。

『どうなるんだろ?』

と、清人は、生きた心地もない。むしろ落着いているお次を力に、息をころして隠れていた。

やがて、固山宗次の弟子やゴロ浪人は、獲物を持って、襲せて来たが、がらん――と開け放してある家の中と、どかどか燃え旺っている火を見ると、

『……おやっ?』

『はてな?』

立ち竦んで、垣の外を、やや暫く、こそこそしていたが、そのうちに町廻りが来たので、わっと逃げ散ってしまった。

三

清人は、飛び出して、手を打った。

『わははは。ざまあ見やがれ。師匠、もう逃げちまいましたぜ』

お次は、手桶の水を、火にかけて消していた。

むっくり起き上って、清麿は、