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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

不滅の国瓊

一

『わたしは、初めて聞きましたが、凍っている死骸を斬るのと、人肌に温もっている死骸を斬るのとでは、まるで斬れ味がちがうんですってね』

『…………』

清人は涙もろい。お次からそう聞くうちに、もう両腕に顔を埋めて、彼女の方へ背中を向け、しゃくり上げて泣いているのだった。

『……まあ、又泣いてしまって。清人さん、お師匠様の心が分ったら、泣かないでも、それを、胆に銘じておいて、いつか御恩返しをすればいいじゃありませんか。……お師匠様も、きょうは、去年からかかって、一心に鍛ち上げたお刀を持って、佐久間先生とやらのお屋敷へお出かけだし……さ、泣かないでよ。ね、清人さん、鶯が笑っています』

裏庭の梅花はもう綻びかけていた。

不滅の国瓊

一

長州訛の侍、薩摩弁の侍、柳河藩の某、荘内藩の誰――と、木挽町の西洋学者の門を出入する志士風の者はかなり頻繁であった。

清麿も、その一人だった。

彼が贈った一作は、いつも、象山の座右に置かれていた。

そこで、幾多の志士と、清麿は知り合った。若い志士たちの理想や議論をだまって聞いていた。

――が、彼は同時に、世間の如才ない、刀鍛冶のように、金次第のいわゆる御差刀料などは作れなくなってしまった。