轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
自動車のタイヤは、かれのからだとすれすれのところを、うなりを生じて飛び去っていった。うしろの番号を見るひまも何もなかった。たちまち向こうの町かどを曲がって、見えなくなってしまった。
さいわいたいしたケガはなかったけれど、むりに走ったので、足の傷が痛みだした。アパートへ帰りつくのがやっとだった。
「どうもおかしい。あの自動車は、ぼくの逃げるほうへ追っかけてきた。ぼくをひき殺そうとしているようなけんまくだった。車には人相のわるい運転手がひとり乗っているばかりだった。タクシーじゃない。ハイヤーか自家用車らしい」
篠田がそれを話すと、美与子も心配そうに、
「へんだわねえ。あなたが外へ出るたんびに、あぶないことが起こるのだわ。ねえ、もしかしたら……」
「エッ、もしかしたら?」
「川波が、あたしたちがここに住んでいることを気づいたのじゃないかしら。そして、だれかにたのんで、あなたのいのちをつけねらっているんじゃないかしら。あの人、まるで気ちがいなんだから、何をするかわかりゃしないわ」
「まさか、このアパートを気づくはずはないよ。あの人にはまるで縁のない方角だもの。それに、もとのぼくのアパートにも、会社にも、ここのことは何もいってないんだからね」