轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

そのうえ、仲間の年上の少女たちにもずいぶんいじめられたが、さち子はそういうことに不感症になっていたので、泣きもしなかった。悲しいたびに泣いていたら、朝から晩まで泣いていなければならなかったからである。この少女は、泣くことさえ、もう忘れているように見えた。それにしても、大曾根とは、あのぼろぼろ男にとって、なんといかめしい姓であろう。また、さち子(幸子)とは、この哀れな少女にとって、なんという皮肉な名であろう。あのぼろ男が陸軍大尉時代には、大曾根という姓をわが武勇にふさわしい氏と誇っていたことであろう。そして、その最初の愛児に、行く末めでたかれとて、さち子という名をつけたのでもあろう。

人通りのとだえた暗い夜の町を、小さな女の子が、穴のあいた赤い毛糸の上着に、セイラー服の短いスカート、素足にぞうりばきで、ペタペタと歩いていた。

大曾根さち子が花を売りつくし、うわまえをはねられて、三百七十円の札束をポケットに、家路についたのはもう十二時すぎであった。彼女は渋谷の酒場街の仕事場から、十数町の掘っ立て小屋へ帰る道すがらが、いちばんしあわせであった。うちには鬼が待っている。