轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

ふたりは手を上げ足を上げて、八方の鏡を見まわした。手足をあげている影は、全体のほんの一部分にすぎない。やっぱり、別の黒ビロードがはいってきたのだ。ひとりやふたりではない。五人、十人と、新まいの客がつめかけてきたのであろう。

音楽も歌声も、少しもとぎれないでつづいていた。耳をろうする音響が、かれらの思考力を混迷させたのであろうか。

いや、そうではない。鏡の影とは見えぬ実物の黒ビロードが、前から、うしろから、右から、左から、ふたりのほうへ近づいてくるのがはっきり認められた。その近づきかたが、ただごとではない。賊を包囲した警官隊が、包囲の輪をじりじりとせばめてくるあの感じであった。しかも、その包囲陣は少なくとも十人を下らないように見えた。

ふたりはもう身動きができなかった。いまわしい予感がひしひしと迫ってきた。

だが、音楽と歌声は最高潮に達していた。木々の裸女たちのゆらめきも、物狂わしくなっていた。ワーン、ワーンという響きに八方の鏡もゆらぎ、洞窟そのものも揺れ動いているかと感じられた。

その大音響が、一瞬にしてぴたりと止まった。裸女どもも、人形のように静止した。