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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
七つの顔が、巨大な花と笑っていた。十四の乳ぶさが、七つの桃型に輝くしりが、十四のなめらかな肩が、腕が、ももが……つややかに、うぶ毛を見せて光っていた。やがて、頭上三メートル、二メートル、ひとりひとりの裸女が、シネラマの巨人となった。もはや雲の全体を見ることはできなかった。わずかにその一部分、ひとりかふたりの巨像を見上げるばかりであった。
耳には天上の楽の音があった。鼻にはむせかえる香料と女人のはだのにおいがあった。目には深いくぼみを持つ豊満な肉塊があった。肉塊はふたりの上にのしかかってきた。もうひとりの全身をさえ見ることができなかった。それは巨大なる女体の一部分であった。あぶらづいた筋肉とうぶ毛の林であった。
ふたりは肉塊の圧迫に耐えかねて、徐々に首をちぢめ、ついには谷底の岩の上に仰臥してしまった。その顔の上に、はちきれんばかりにつややかな肉塊が迫ってきた。皮膚が接触した。すべすべした冷たいはだざわりだった。顔の上をぴったりと、弾力のある肉塊がふたしてしまった。眼界がまっくらになるいっせつなまえ、そこに顕微鏡的な女体の皮膚があった。巨大な毛穴、ギラギラ光るうろこ型の角質。