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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

つまり、たったひとりを殺すために、なんの関係もない二十四人を犠牲にしたのです。ですから、依頼件数でいえば六件にすぎません。しかし、それから受けた会社の収益は数千万円にのぼっています」

「その集団殺人というのは、汽車ですか、バスですか、船ですか、それとも飛行機ですか」

春泥はだんだん興味を持ちはじめていた。

「フフフ、さすがにすばやいですね。実は汽車でした。場所は申しませんが、高いがけの下を通って、急カーブを切る、そのかどのところへ、がけの上から、列車の来るのを見すまして、岩をころがしたのです。岩はレールに落ち、列車は見通しがきかないために、それにのり上げて、客車の一部が反対側の谷底に転落しました。二十五人というのは、死者だけの数ですよ」

「それで、うまく目的を達したのですか」

「偶然、目的の人物が死者の中にはいっていました。やりそこなえば、また別の手段をとるつもりでしたがね」

「だれが岩を落としたのです」

「むろん、ぼくらじゃありません。罪のない子どもです。その子どもに、ちょうどその時間に岩を落とさせるようにしたのは、ぼくらのひとりでしたがね。子どもは岩がレールに落ちるなんて少しも考えないで、ただいたずらをやってみたにすぎません。