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しょうわゆうげきたい

昭和遊撃隊

平田 晋策

「少年倶楽部」1934(昭和9)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,452 字 · 208 页

青空文庫

水門はまるで長い谷間のようだ。両岸の崖がどこまでもどこまでも黒々とつづいている。

その谷底の闇を、わが『最上』は、もの凄い海流に押し流されながら奥へ、奥へ、入って行くのだ。

小さい影が二つ。舳に近い甲板の上で動いている。

一つの影は、夜目にも美しい少女である。赤い毛糸の帽子をかむって、豹の皮の外套にくるまっている。

「ね、あたし怖いわ。この水門、どこまでつづいているんでしょう。」

つぶらな黒曜石のような眼で、奥の方をすかして見たが、黒々とした崖が、艦の行手をさえぎるように聳え、どこまで行ったら、ひろい入江へ出るのか、見当がつかない。

「代ちゃん、ここは地獄の入口だよ。」

――もう一つの小さい影がささやいた。一等兵曹の服装をしているが、紅顔の美少年だ。明るい頬の色、澄み切った眼のかがやき。どこかで見たような顔だ。

――おや清君じゃないか。そうだ、たしかに『最上』の設計者武田博士の弟、清少年にちがいない。

彼は今や、怪巡洋艦『最上』の舳に仁王立ちになって、じっと腕ぐみしているのである。

水門の闇はいよいよくらく、上を見ると、高い高い絶壁の間、もうもうと立ちこめた、霧の中に、ぼんやり月が光っている。