轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
このとめは酒月の一家が淀橋の専売局の横露地に住んでいたころからの馴染みだが、悦子の方ではまるで自分の召使のように思っている。
悦子は生意気そうに唇を反らしながらとめの話を聞いていたが、急に真顔になって、
「それはそうと、旦那は支那の王様だってそれは本当? もしそうだったら素敵だわねェ」
と眼元をウットリとさせていかにも羨ましそう。とめは大袈裟に頷いて、
「ええそれは本当のことらしいのでございます。何しろ大変な仕送りだと見えて、一本卅円もする三鞭酒たらいうものを飲みほうだいに飲み散らし、冬の真ッさなかに鮎が食いてえのポンカンないかのと、それはもう」
悦子は憎々しく舌打ちをし、
「まア、生意気ねェ、大した器量でもないくせに。どこがよくてあんなやつを」
とめは手で煽ぎ立てるようにし、
「ええええ、器量ならとてもあなたの足元にも及びませんのさ。それが女優たらいうことが大変自慢で、この間なんぞは踊って見せようかというから何をするかと思ったら、いきなりスッポリ脱いで裸になり、何にもかも放り出してステテコのようなものを踊り出しますんです。そうかと思うと急に血の道でも起ったような顰めっ面をして、殺すなら早く殺せエ、なんて喚き出したり、とんと狂人沙汰なんでございます。