轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

三十八、馥郁たる香気の事 並に時計台の首吊人の事

あとまだ四十分あります。あなたが勝つか、私が勝つか。その結果こそは刮目に価するというべきでしょう」

そういって軽く一揖すると、今度こそ本当に出て行った。唖然たる総監と四銃士を後に残して。

作者は名文のおみちびきに従って、これから真名古を向島に急行させる。そこではそもそもいかなる事件が起ろうというのか、それについて知られんとするならば、次なる章をお読み取り願いたい。

三十八、馥郁たる香気の事

並に時計台の首吊人の事

「月を待乳の山に望み、風白髭の森を渡る」とはむかしの話。夜空に聳え立つ橋場のガスタンク、綾瀬の岸には亭々たる鐘紡の煙突。頭をめぐらして奥山の方を眺めると、炎々たるネオン・ライトが雲を灼き、さながら河向うの火事のよう。風流を大川端の名にのみとどめ、月にも雪にも何の風情も増さばこそ、至って無味殺風景な工場地帯。とりわけ震災の後はなかなかに立ち揃わず、言問から橋場、小梅へかけて、至るところに歯の抜けたような空地がある。

これもその一つ、もとはさる酒造会社の工場があったのが震災で跡形もなくなり、粗末な海鼠板で囲った囲地の中は、赤錆の鉄線やら煉瓦の堆積やら、足ぶみもならぬほど押重なって、おどろおどろしい廃頽のさまを示しながら、ずっと長命寺の地境までつづいている。