轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
終回
三十九、銀座の死刑台の事 並に政府震撼するの事
あたかもそれが「銀座」の記念塔ででもあるように、優雅なようすで聳え立っている服部の時計台に、奇妙なものがブラ下がっている。
黒漆のタキシードを着た一人の紳士が、死んだ猫のように避雷針の上から首ッ吊にされ、風にふかれて踊り人形のようにヒョイヒョイと揺れている。時計台の照明がバック・ライトになって、文字盤一杯に何とも形容出来ぬ凄惨なシルエットを浮上げているのである。
「わア、人殺しだア」
というすさまじい叫び声が、大東京のこの目貫の四つ角で、夜の寂莫を破ってけたたましく響き渡った。
終回
三十九、銀座の死刑台の事
並に政府震撼するの事
四時喧鬧の絶えることない繁劇なる大都会も、しばし微睡みかける時がある。さる外国の作家は、こういう時刻を「大都会の時間外」といった。三時から卅分ほどの間、大都会はねむりにつく。時の流れは歩みをとめ、万象はハタと休止する。
午前三時、四丁目の交叉点に立って新橋の方を眺めると、街燈の光も淡くほのかに、銀座の峡は深沈たる闇の中に沈み、闃然とものの音もない。
それまでは人波や交通機関の徂徠に遮られていたのが、いまはコソリとも動き廻る影もないので、展望のきくことは驚くばかり、薄光る路面電車のレールが、物淋しい透視影図を描きながら消えて行くのが、はるばる遠くまで見透かされる。