轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
元日っぱらから縁起でもねえ」
「いいえ、死骸は警察で持って行ってしまったとさ」
「おや、それア稀有だこと。……ほかになんか妙な様子はなかったかい。ちょっと思い当ることもあるんだが」
幸田は玄関端まで出て来ると、
「おい、新町の鳥屋の小僧だな」
「へい」
「それァ身投げでなくて殺されたんじゃないのか」
小僧は急に眼を光らせ、
「ええ、実は私もそう思うんで」
「ほう、何故だ」
「だって、そうなんです。身投げをするやつが鳥を注文するなんてのはないでしょう。明日の朝真鴨を二羽届けろって電話を掛けてよこしたんです」
「それはいつ」
「大晦日の……、いや元日朝の二時頃だったんで」
幸田は座敷の方へ振向くと、ジロリと酒月と眼を見合わせる。
虎の門の交叉点に近い晩成軒という喫茶店。一と眼で道路を見渡せる窓際の席に掛けている婦人は、ついさっき「巴里」にいたアパート有明荘の住人の一人。アメリカ帰りのダンサー川俣踏絵。ひどく色気の悪い顔つきで歩道の方を眺めながら何かソワソワと落着かぬ体である。
間もなくガラス窓にチラリと人影がさし、外套の襟を立ててタキシードの胸元を隠すようにして入って来たのは、これもつい先刻「巴里」