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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

何しろ、私の印象に残っているのは残月と鶴子だけです」

これで訊問は終った。真名古が警視庁へ電話をかけると五分と間を置かずに四人の人物がやって来た。いずれも冷徹な雰囲気を身につけた、さながら科学実験室から出て来たような連中である。真名古が何事か囁くと、ここに奇妙な事が始まった。げにも物々しい室内捜査が始められたのである。加十は何のことやら判らず、アッケラカンと口を開いて眺めていたが、真名古は一体何を探しているのか、読者諸君の方がよく御存知だ。真名古は「帝王」を探しているのである。

この四人の人物は生涯こんな風に室内捜査ばかりしているのかと思われるほど、その行動は機敏かつ合理的である。ポオの「盗まれた手紙」以来、室内捜査法はこのような高度の発達を遂げてしまったのであろうか。この謁見室に続く四つの部屋の空間を幾つかに区劃し、その中にあるものはいかなる微妙なものも容赦せぬ。塵ッぱの裏まで引っ繰り返して験めながら目にもとまらぬような早さで捜査を進めてゆく。椅子も机もバラバラにしてしまった。ある区劃の中に薄ぼんやりと突ッ立っていたお蔭で加十まで丸裸にされ、耳の孔まで捜査されたのである。