轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
「すると、ダイヤモンドはもう山木の手にはないんだね」
印東は小馬鹿にしたような目付で幸田の顔をマジマジと見返しながら、
「いいえ。ところが、そうじゃない」
松沢は泳ぎ出して、
「すると、どうなんです。やはり、山木が持っているんですか」
「さあ」
「大切なところで打棄っちゃいけねえ。すると、あんた誰がダイヤモンドを持っているか知ってるのかね」
印東は頷いて、
「ええ、知ってるわよ」
「へえ、一体、誰が持ってるんです」
印東はくねくねと色っぽく嬌態をして、
「いやよ、ただじゃ厭」
というと志摩の方に向き、
「こんな雑兵に掛け合うより、じかにあんたと口をきいた方が早いと思うんだが、ねえ、志摩さん、寝返り代と密告賃、それに口銭を合せて、〆ていくら出す?」
志摩徳は浅黒い引緊った頬を弛ませ、
「ただであんたを転ばそうなんてケチなことはしません。いかにも水揚料は出します。三千ずつ三口、それに化粧料を入れて〆めて一万両。小切手でよかったらすぐ書きます」
印東は自堕落に足を投げ出しながら、
「結構。すぐ書いてちょうだい」
志摩徳は懐中から小切手帖を取出し、額面を書きつけてそれを膝の上に置くと、ニンマリと印東に笑いかけ、