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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

山木はいまどこにいるね」

「存じません」

「ふむ、庇い立てするところを見ると、お前も共謀なんだな。……こりゃいい。そうとなれア、これから警視庁へ引っぱって行って、嫌でも口を開かして見せる」

と子供を欺すように立ち上る真似をする。花はキッパリとした声で、

「ええ、結構ですわ、お供します」

松沢は幸田と印東の方へ振向いて、額をおさえ、

「これァ、難物だ。次へ廻しやしょう」

印東はだらしなく壁に凭れて、茶化すような眼つきでこの場の有様を眺めていたが、無言のままに立ち上ると、ツカツカと花の傍へ寄ってその肩に手を掛け、

「大して難かしいこっちゃありゃしない。山木がどこにいるか、たった一言いってくれればいいのよ」

花は怨めしそうにその顔を見上げ、

「まあ、あなたまで、……あたし、何も知らないんですから、もう、かんにんしてちょうだい」

印東は花の手を捻り上げ、

「いっておしまい、楽になる」

花は畳に髪をすりつけて身悶えしながら、

「ゆるして、ちょうだい」

膝を割って、美しい色どりの間から白い脛をのぞかせ、あっつ、とせつなそうに眉を寄せる。まさに落花狼藉。印東は鼻唄交りにぐいとこじ上げ、