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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

凄いは凄いなりに、どんなふうになって死ぬのか見てやりたい気もする。……とうとう我慢し切れなくなって、夜の十一時ごろ鶴子の部屋に入って行くと、鶴子はいつもの通り素肌に長襦袢一枚ひっかけた、だらしない格恰で寝椅子の上に引っくり返って煙草を喫っている。一向どうという様子もない。……花札を引こうというから六百拳をしているうちに午前二時になった。……さすがに何となく凄いんだな。スタンドは藤色の厚いシェードに被われているんで、部屋の隅々は澱んだように暗い。思いなしか、その闇の中に、亡者や、餓鬼や、精霊のようなものが数限りなくムラムラと犇めき合って、爪の生えた長い指で一斉にこっちを指差しながらゲラゲラ笑ったり、舌を出したり、囁いたりしているように思われる。……冷汗で身体じゅうが濡れたようになって、ゾーッと総毛だって、今にも気が遠くなるような気がする……ところが、鶴子のほうは一向平気で、アブサンを呷りつけながら賑やかに喋りたてている。……そのうちに二時半を打ち、三時を打ち、とうとう三時半になったが、鶴子はビクともしない。呪い殺されるどころか、大虎になって、大変な話を手真似でやり出す始末なんだ。