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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
てこれを市民の飲用に当てた。なお分水としては、三田、青山、亀有の三上水があった。
この二上水大伏樋の通路を述べると、神田上水は北多摩郡三鷹村の井頭池に発し、上井草の善福寺池の水を合せて目白台の下に到り、小日向台の麓に沿って後楽園内を流れ、水道橋附近で大樋をもって神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水し、日比谷門下の地下を通り数寄屋門附近で濠に達する。
玉川上水の方は西多摩野羽村から多摩川の水を分岐し、四谷大木戸から市中に入り、虎の門、田村町を経て日比谷に達し、一旦神田上水の大伏樋と合し、更に分れて山下門橋から西に迂回して馬場先門橋の附近で濠に達する。
これらは上水の幹線だが、この大伏樋から無数の分樋が縦横に走り、麹町の地下一帯は、かのパリ市の暗渠道にも劣らぬ複雑極まる大地下道を構成している。一旦その大伏樋の中へ入れば、一度も地上に現われることなくして、一方は京橋、日本橋を経て小日向台町まで、一方は虎の門を経て四谷大木戸の地下に達することが出来るのである。栗田一夢の「天明雑集」を見ると、足立郡新井方村百姓市兵衛の伜新助、すなわち、例の稲葉小僧新助がこの大伏樋を利用して、自在に活躍している。