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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

を形成するあらゆる都市機構のうちもっとも魅惑に富む部分でなければならぬ。

加十の受売りをして思わず考証めいた閑筆を弄したが、まずこれぐらいで止めて置いて、すると、一体どこから皇帝はこの伏樋の中に入りこまれたものであろう。この暗道は地下十五尺のところを通っているのだから、容易なことで入り込むことが出来ぬ筈である。この附近に大建築でも始まっていれば、そこで大伏樋が断ち切られ暗道の口が露呈する筈だが……ふと思いついた。今、田村町一丁目で放送局の大地下工事が始まっている。地下二階の大建築だという事だから、思うに大伏樋は必ずやそこで断ち切られ、工事場のどこかで大暗道の入口がアングリと口を開いているに相違ない! つまり、王様は何かの都合でそこから入り込まれたのに違いない、という具合に、加十の推理は一気呵成にここまで辿り着いた。日ごろ血の廻りの悪い加十としては、なかなか天晴れな出来栄えだったのである。

さて加十はそうと見込みをつけると日比谷公園を走り出し、足も空に放送局の工事場まで駆けて行ったが、いきなりそこへ入り込むかと思いのほか、一丁目の交叉点を越えて南佐久間町の方へ飛んで行く。