轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
……して見ると、今度の事件には旦那も何かお差合いがおあんなさると見える」
と、口紅の剥げかかった薄い唇を翻す。
ハッチソンは盃を卓の上に置くと、これも抜目のない面付で、
「差合いという点なら、まず御同様。何しろ、有明荘の住人の一人だってえことがこの際何よりモノをいう。どう誘導けられて悲惨な羽目に陥し込まれんものでもないから、こういう場合にはあまり逸らんのが大丈夫の道、触らぬ神に祟りなしで、せいぜいユックリと凪ぎを待つ方がよろしい」
「いや、ご尤も」といって印東はなおも探るようにハッチソンの顔を眺めながら、
「それはそうと、えらい騒ぎになったわね。仄聞するところでは、警視庁始まって以来という大捕物になっているというのですが、あたしなぞはいい面の皮、ただもう、アレヨアレヨと逃げ廻っているんですわ。……いまもいったように、馬道の木賃宿で、幸田なんかと一緒に山木をとッちめていますと、それ、臨検だというんで泡を喰って戸外へ飛び出して見ると、それがいかにも凄い景況なんです。……聖天横丁の入口に警察のトラックが停って、両側の木賃宿を一斉に網の目をすくように洗っているんですの。