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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

どうするんです、この始末は」

「いや、失敬します。……でもね噴水君、いずれ何とかなりますよ。あなたの身柄は確かに私が引受けました。心配なさらなくともようござんす。では」

と不可解なことを言うと、何か忘れものでもしたのか、帽子を冠ったまま玄関と反対の寝室の方へ入って行った。

前後の情況から判断すると宗皇帝が鶴子を投げ落したと思われるが、それにしてもどんな動機でそんな野蛮な振舞いをしたのであろう。或いは先刻鶴子が皇帝の眼の前で加十と眼に余る痴態を演じたので、嫉妬の余りこのような兇行を演じたのかも知れぬ。然しこんなことを作者がここで言ってみたところでたいして益もないことだから、これはいずれこの小説中に登場して来る真名古明警部に解決して貰うことにして、引続きこの場の叙述をすすめると、それから約五分ほどの後、力強く玄関の扉を打ち叩く者があるから加十は急いで扉を引き開けて見ると、入って来たのは、一人の巡査部長と一人の私服。

巡査部長の方は部屋の中へ一歩踏み込むと猶予なく加十に、

「殺人があったというのは此処だね。死体は何処にあるのか」

と問いかけるうちに早や刑事は玄関の前に立ちはだかって油断なく身構える体である。