轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
しかし、この見込みは間違いだ。現に真名古自身が幾度となく試みて、到底そんな芸当が出来ないことを充分に認めているし、だいいち、その窓からはだれも出て行ってはいないのだ。
それにしても、一体何の必要があって王様はここを脱け出されたのであろう。王様は古市加十と間違われてここへ放り込まれたのだが、そうとすれば、自分が本物の王様である所以を述べてあくまでも抗弁すればいいのであって、何も留置場破りなどをする必要はない。
聞くところでは、秀陳の告発によってホテルで逮捕されようとした時は、かなり猛烈に抵抗したということだったが、この監房に連れ込まれると、その拘留人は急に落着いたようすになって、
「いや、これなら願ってもないことです」
といって、気楽そうに畳の上へ寝ころんでしまったという。
思うに皇帝はこの幸運な偶然を聡明に利用しようとなされたのであろう。暗殺者の剽悍な追及から身を衛るためには、ここほど適切な場所はないからである。さもなければ、あの剛毅な王様のことだから、こんな不幸な取扱いを受けてオメオメと隠忍してはいない。あくまで抗争されたに違いない。それをされなかったところを見ると、王様は大体においてこの情勢に満足していられたので、されば、留置場破りなどをする意志は毛頭持っていられなかったのだと見るべきであろう。