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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
なぜならば、いかになんでも、こんな妙な細工を王様のいるところではやりにくい筈だからである。いわば、たいへんに人を馬鹿にしたやり方なので。
では、そもそもだれに誤解させようというのか。ほかにお目あてがあるわけはない。必ずこの検証を行なう筈の真名古の眼を晦ましたいのだ。
この朝以来、真名古捜査課長ともあろうものが、有明荘の現場整備から除外されたり、犯罪現場の立入禁止を受けたり、そのほか並々ならぬ屈辱と妨害を受けたが、なおもまたここで、何者かが陰険な手段を用いて真名古の捜査を妨げようとしているのである。
枯木寒厳の真名古といえども、これほど手厚い歓待を受けては、さすがに肚にすえかねたのであろう、遺憾骨髄といった面持でキリキリと歯噛みをしながら、穴のあかんばかりに窓の方を睨みつけていたが、やがて迸るような劇烈な語勢で、
「馬鹿ナ、こんなことでこの真名古がやっつけられると思ったら大変な見当違いだ。……ねえ、総監、鶴子を自殺に見せかけようとした今朝の踏台やスリッパよりは多少お手際だが、どうしてどうして、こんなことでは。……あなたは秀才だが、惜しいことにはすこしやりすぎる。