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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

爪先はちょうど※(ローマ数字6、1-13-26)のところに垂れ、横向きになった頭は※(ローマ数字2、1-13-22)のところへ行っているので、死体それ自身が指針となって、死刑が執行された時刻が二時卅分であったことを報じているのだと思われるのである。

ああ、それにしても、この優し気な時計台が、いつの日か残酷なる死刑台になろうとは、日ごとこれを仰ぐ何びとがそれを予知し得たであろう。銀座の街角の時計台で絞首の刑を行なうなどというのは、あんまりひどい仕方だ。しかし、一方から考えると、こういう優美な死刑を行なうのに、典雅なようすをしたこの時計台こそもっともふさわしい場所だと思われぬでもない。胸に一輪の花をつけ、あえかにも美しい身のこなしで、ゆらりと垂れ下がっているようすというものは、何か飄逸な趣きがあって、一味の詩情を感じさせるのである。

そもそも何者がこういう詩的な思いつきをしたのであろう。また、この瀟洒な紳士にしても、どういう理由によって、このような奇抜な場所で宙ぶらりんにならなければならなかったのであろう。

益もない詮策はあと廻しにして、再び地上の描写に立ち戻ると、件の警官氏はあんぐりと口をあいたまま先刻から眼も離さずにこの意外な風景に見入っていたが、現在己れが眼で見ているこの光景が、どうしても事実とは信じ