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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

親と子

親と子

その同じ夜の深夜であった。

六波羅探題の奉行職、斎藤太郎左衛門利行は、にわかに眠りからさまされた。

「お嬢様おこしにござります」

と、侍臣が知らせて来たからであった。

「ナニ嬢が? 早瀬が来たと?」

「はい、おこしにござります」

「で、頼春も一緒にか?」

「いえ、お一人にござります。……それもお供もお連れ遊ばさず」

「…………」

太郎左衛門は立ち上がった。

先年妻を先立たせて以来、側室も置かない男鰥の生活、それだけ真面目な人物であったが、娘を愛する心持ちは、人いちばい勝れていた。

(この深夜に女の身一人で、三条堀川からこの六波羅まで、何用あって来たのであろう?)

(――大事が! 何か一大事が!)

ふとそんな予感がした。

(夫婦あらそいかも知れぬわい。あまりに仲がよかったから)

こんなようにも思われて、つい微苦笑が浮かびそうになったが、恋婿頼春にかたづいて、三年をけみした今日が日まで、ついぞ一度としてそのような始末を、持ちこんで来たことのない彼女であった。そうではあるまいと考えられた。

「よいわ、ここでよい、寝所へとおせ」

立ち上がった太郎左衛門はまた坐った。