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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

けれども、さして心を傷めた趣のあるにもあらず、茅花々々土筆、摘草に草臥れて、日南に憩っているものと、大なる違はない。

自分が手籠めになろうとしたのを、折よく来かかって扶けてくれた、旅客に顔を見られたが、直ぐにとこうの口も利かず、鬼に捉られた使の白鳩、さすがに翼を悩めたらしゅう、肩のあたり、胸のあたり、黒髪も打揺らぐは、朝風のさそうにあらず、はずんで呼吸をつくのであった。

「此奴等、ほんとうに悪い洒落だ。」

また呟くがごとくいう。

伝九郎苦り切った面を上げ、

「でもその全く、へい、洒落に違いはござりやせんので、なあ、おじい。」

「此奴が申し上げる通りでござりやす。」

しり込みするのを右瞻左瞻、

「むむ、まあしかしお前方、素直にそうやって、折れてくれて、お互に幸だ。

朝とはいっても全然、こうやって、前後に人通りのない山路だ、風体の悪い……おい、悪く聞くな。」

「へへへへへ、どういたしやして。」

と雲おじい、膝に手を置いて突出した、臀へ頸を捻じ向けて、己が風体をじろりじろり。

「大の男が二人懸りで、この娘さんを押伏せようとしているのを見ちゃ、旅空の烏だって、黙って見ては通られないから、私も夢中で飛込んだが。