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わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页
丁か半か
五
「相談は極ってら。」
目を見合わせて北叟笑みした、伝九、更めて、面を捻向け、
「ええ、姉え、ちくとんべい、お前にの。」
「己達が頼みてえ事があるんだ。」
「素直に肯かねえじゃ不可えぞ。」
お鶴は涼い目を下ぶせに、真中にすらりと立って、牛頭馬頭のような御前立を、心置なく瞰下しながら、仇気なく打傾いて、
「頼みッて?」
「おう、姉え、お前の胸にあるものだ。」
「ここへ打ちまけて見せてくんろ。」
といって伝九郎上目づかい、
「こう姉え、知ってるか、ちょうどお関所にかかるこの道の岐れる処は、ここン処だ。つい今年の三月、熱海へ奉公に出ておった、お前ぐれえな新造がの、親里の吉浜へ、雛の節句に帰るッて、晩方通りかかっての、絞殺された処だぜ、なあ、おじい。」
「そうよ、恐ねえ処よの、何でもいうことを肯かねえじゃあ。」
丁か半か
五
「へいへいへい、何旦那ちょいとその、洒落に遣りましたばかりなんで、へい、大した天下を望むような謀叛を起したではござりやせん。」
雲おじいは眩ゆそうな顔をして、皿の兀げた天窓を掻く。
「全くもちまして、娘ッ児をどうのこうの、私等ア御覧なさりやすとおり、いい年紀でござりやす。