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わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页
四
」
さては盗んだものそうな。
「なあ、姉え、此方にも一ツ遣ろうか、はは、正直に黙っていら。」
「あの児、こっちへ来や、ちょっと来ねえ、好い相談があるが、どうだ。」
四
「何だ何だ、蜜柑を遣る。かう死んだ小児でも思い出したか、詰らねえ後生気を起しやがるな、打棄っておけというに、やい。」
「うんにゃ、後生気どころじゃねえ、ここ一番という娑婆ッ気だ、伝九。」
とすくすくと鬚の生えた、山猫のような口を突出し、対手の耳に囁くと、伝九と呼ばれた一人は、歪めて聞いていた面に、もっての外な、ニヤリと笑む。
「な。」
「そうか、うう、そうか、面白かんべい、へへへへへへ、おい、姉え。」
「待ちねえ待ちねえ、待ちねえよ。」
薄の霜に入残る、有明月の消え行く状、覗いている顔が彼方へ、茅萱の骨に隠れんとした、お鶴は続けさまに呼び留められ、あえて危む様子もなく、
「あい、私。」
「お前だお前だ、お前に限ることだ、なあ、雲平おじい。」
「まあ、姉え、ちょっと来ねえよ。」
雲平なるもの、板昆布のような袖口から、真黒な手を出して、図太く浚え込む形で手招く。
「何さ。」
と声も気も軽う、衝と身を反して歩を向けた。