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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

御曹子

十九

ははははは。」

機会もなしにまた笑い、

「まあ、まあ、御安心を遊ばして御寝なりまし、と申しました処で、夫人は何も手前どものように、ちっともお驚きなりませんのでござりますから、別に。」

といって、照れ坊主、禿げた処をまっすぐに指で圧え、

「ええ、ついその一月ばかりの屈託が抜けました嬉しさで、貴女様はお馴染の余り、とんだ長話をいたしました。

慌てもの、臆病もの、大寄合のお伽話。夜分御徒然の折から、お笑い草にもあいなりますれば、手前とんだその大手柄でござりまする。」

「いえ、まさかとは思っても、こないだ中のような風説を聞くと、好い心持はしませんよ、私も気になっていたんです。」

火箸に手を載せ、艶麗に打微笑み、

「おめでとう。」

「へいッ。」

と手をつき、

「おめでとう存じまする。」

御曹子

十九

「ですが地震はただ可い加減な、当推量じゃあったでしょうが、何なの、崖の総六の娘さんとかが、小田原へ貢物を持って行って、怪い神主に、受取を貰って来た、判に獣のような手のあとが押してあったというのはほんとう?」

喜番この時立ち構えで、腰を廊下へ退きながら、

「ええも、それは貴女様、ほんとうの事でござりますとも。