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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

神妙候

十七

階から飛んだといった、御夫婦のような大怪我は格別。

大概の打傷、擦傷、筋を違えなどは、内分にして、膏薬も焼酎も夜があけてから隠密という了簡。

ありようは手前なども、少々手負。が、遁傷でござりまして、女中どもの前もいかが、へい、知らん顔で居りまするようなわけ。

でござりまするから、往来ちりぢりの衣類諸道具、いつの間にやら、半時も経ちませぬ内に、綺麗に掃いたように無くなりました。誰が取り入れたということもござりませんで。

余りさっぱり。

最初その車に積んだら、大八にざっと四五十台とも覚えましたのが、地震が鎮まりますと忽然で、盆踊りのあとじゃござりませんから、鼻紙一枚落ちちゃいず、お祭のあとでござりませんから、竹の皮一片見えなくなってしまったでござりますわ。」

神妙候

十七

「これ等はごく御用心の宜い方で。なるほど、揺れません地震でござりましたもの、いくらでも荷は出せますが、しかしその荷物を投り出していた方が、白い浴衣を着た、見上げるような大入道だったと、申して、例のどんよりした薄明じゃござりますし、ちょうどその時分、どこからともなく衣類や鞄などが降った最中、それを見たものが、魔ものじゃと申します。