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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

神様ねえ、神様ですねえ、貴下は。」

と、つかつかと擦り寄ると、思わずたじろいで退ったが、

「ああ、神様だ。」

いった声に力がこもって、ついた杖の尖が幽にふるえた。娘のための方便ながら、勿体なくや思いけむ。と見ると瞼に色を染めて、慌しげにいい直した。

「お前にだけは神様です。」

「ではね、途中でまた誰かに捉まるとね、今度は私、素直に見せてやりましょう。

それでもね、あの、お宮様へ行かない前に、他所の人に見せるのは口惜しいんですから、私、貴下にお目にかけるわ。」

とて、直ぐに手を、胸なる苞の両端へ。

「お待ち、待て待て。」

急におさえたが、黙って、しばらくして、目の色が定まった。

「見せてくれるか、じゃ、見よう。熱海の公園は咲いたろう、小田原でも莟を見た、この陽気。年内からもう春だ、夢に見てさえ可いというもの、どれ。」

手巾を引出して、根笹は浅く霜をのせたが、胸に抱いたら暖かそうに、またふッくりと日の当る、路傍の石一個、滑らかな面を払うて、そのまま、はらりと、此方へとて。

浅葱の紐は白い頸から、ふさふさとある髪を潜って、苞は両手に外された。既にその白魚の指のかかった時、雪なす衣の胸を通して、曇りなき娘の乳のあたりに、早や描かれて見えるよう。