轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页
紫紺の紐は胸にあれども、結ばず、絣の書生羽織を被ったように引かけた。厚衾二組に、座敷の大抵狭められて、廊下の障子に押つけた、一閑張の机の上、抜いた指環、黄金時計、懐中ものの袱紗も見え、体温器、洋杯の類、メエトルグラス、グラムを刻んだ秤など、散々になった中に、しなやかに肱をついて新聞を読む後姿。
やや傾けたる丸髷の飾の中差の、鼈甲の色たらたらと、打向う、洋燈の光透通って、顔の月も映ろうばかり。この美人は、秋山氏、蔦子という、同姓保の令夫人。芳紀の数とやや斉しい、二十五番の上客である。しがみ着いて凭りかかった、机の下で、前褄を合せながら、膝を浮して此方を見向き、
「番頭さん?」
「へい。」
お辞儀、つい目の前に居られたので、向うへ頭を下げるゆとりがなく、頤を引込めて手を支いた。
「さあ、お入んなさい。今日はまたどうしたのか、大変に寒いのね。」
と火鉢の上に、白やかな手を翳した。
「どうもこの、日金颪が参りますと、熱海は難でござりまする。まあ、夜分になりましてから可塩梅に風もちと凪ぎましてござりますが、朝ッからの吹通しで、そこいらへ針がこぼれましたように、ちくちくいたしますでござります、へい。